ジャパニーズ・ペッパーとも呼ばれる山椒の「シビ辛」がブームに

バニラアイスとの相性が良い山椒の辛味成分は記憶障害を減少させる

 山椒(学名:Zanthoxylum piperitum)はミカン科サンショウ属の落葉低木で、葉と球果に独特な香りを有し香辛料として使われます。雄株と雌株が別々であり、雌株のみ実をつけます。
 近年、舌が痺れるような辛さは「シビ辛」と表現され、舌がヒリヒリするような辛さではなく、山椒や花椒(ホアジャオ)などによる辛さを意味することが多いです。山椒などの香辛料を用いた、麻婆豆腐やラーメンなどの料理を「シビ辛料理」と呼ぶこともあるそうです。
 山椒と言えばウナギですが、最近では和・洋・中どれでも使える万能調味料として認識され始めてきました。意外にも、チーズケーキやバニラアイスとの相性が良いです。

意外にバニラアイスと相性が良いです。
柑橘の香りが引き立つ山椒をかけると高級アイスになります。

山椒の商品バリエーション
 最近、市販されている商品の種類が多様で驚きました。やはり、和歌山産の山椒が有名ですが、乾燥方法を工夫したり、石臼挽きで風味を残したり、柑橘系の香りが強い「ぶどう山椒」の商品も特徴的ですね。同じ山椒でも外観や風味がそれぞれ違っていますが、「シビ辛」だけは共通です。ウナギや焼き鳥の調味料以外にスイーツとの相性が良い万能調味料として人気が出ているそうです。

山椒の生理活性成分
 山椒の辛味本体としてサンショオール、ヒドロキシαサンショオールなどの成分が知られています。漢方的には健胃、止痛、駆虫などの効能があり、腹痛や下痢、嘔吐、回虫駆除などに用いられます。山椒の芳香と辛味の刺激には内臓を活性化させる作用もあります。山椒の花言葉が「健康」というのも納得できます。
 サンショオールやヒドロキシαサンショオールは、山椒と同属異種に当たる花椒(ホアジャオ)にも含まれる辛味成分です。
 学習障害や記憶障害を誘発したマウスにヒドロキシαサンショオールを経口投与した試験が報告されています。ヒドロキシαサンショオールの経口摂取は、神経伝達物質であるアセチルコリンを増やして、認知障害を改善することが示されました(1)。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」の意味は、「体は小さくとも才能や力量が優れていて、侮れないこと」の例えであり、山椒の成分が頭に良いことと関係がありそうで面白いですね。英文訳では、Little head great wit.【小さい頭に、大いなる知恵】となりますので、山椒は頭脳を象徴しているのかもしれません(私の勝手な解釈です)。

ぶどう山椒の栽培
 和歌山は山椒の生産量が日本一の産地であり、大粒の実がぶどうの房のようになるのが特徴的な「ぶどう山椒」という品種があります。山椒は雌雄異株のため1本では結実しませんが、ぶどう山椒は雌雄同株であり1本で結実するそうです。
 自分でも栽培できそうだったので、苗を2株購入してみました。今年5月から沖縄で育て始めましたが、落葉性なので、次第に葉が茶色くなって落葉しました。山椒は葉が小さいので水切れはしにくいが、根が弱いので根腐れしやすいそうです。水をやりすぎないように来年の夏まで大事に育てて、大粒の実がなることを楽しみにしています。

ぶどう山椒の苗

葉の香りも楽しめる

(1) Food Funct., 2019,10, 7315-7324

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