肌のバリア機能を高めるパイナップル、乳酸菌を増やす腸活にんにくが登場

機能性表示生鮮食品の2021年版最新動向

 2020年度の健康食品市場規模は、メーカー出荷金額ベースで8689億1000万円となり、前年よりも増加傾向にありました。その中で消費者庁への届出のみで商品に健康訴求できる機能性表示食品が2015年から登場し、市場規模は2019年度が2542億8000万円、2020年度は2843億4000万円となり拡大傾向にあります。コロナ禍の健康意識の高まりから、今後も市場規模の拡大が期待されます。
 日本独自の制度として生鮮食品にも機能性表示が可能となり、記憶力を良くする肉、中性脂肪を下げる魚など、健康機能を堂々と表示する生鮮食品が販売されるようになりました。

サプリだけではなく、生鮮食品にも健康機能を謳える画期的な制度
 この制度の特徴として、「生鮮食品」でも健康機能を表示しても良い、というのが画期的なのです。1日摂取量の根拠をまとめた資料を消費者庁に届出すれば、「高めの血圧を下げる」、「認知機能をサポート」、「目の疲労感を軽減」といった訴求が可能となる世界初の取り組みです。
 農業の生産者や小売業者さんは野菜、果物、卵、肉などの生鮮品について、今まで堂々と謳えなかった健康訴求が売り場で可能となり、新たな差別化の手段になっています。

機能性表示生鮮食品の最新動向
 2021年12月28日時点で、加工食品も含めた機能性表示食品の届出件数は4898件あり、その内、生鮮食品は130件(2.6%)と未だ少ない状況です(1)。
 2015年以降の機能性表示生鮮食品の届出件数の推移をみてみると、2020年までは増加し続けていますが、2021年は若干スピードダウンしています。しかしこの制度が始まった2015年に比べれば、多彩な機能性を表示した生鮮食品が幾つも登場しました。

2021年に届出された機能性表示生鮮食品(農産物)
 以前は、血圧を下げるGABA(トマト、バナナ、ケール等)、骨の健康を期待するβクリプトキサンチン(みかん)やイソフラボン(もやし)などの効能が多かったのですが、最近では機能性表示の内容が多様化しています。
 例えば、紫外線刺激から肌を保護するパプリカ、肌のバリア機能を高めるパイナップルといった肌の保護に焦点を当てた機能性表示が初めて登場しました。また、ビルベリーでは「目の疲労感を緩和し、目の使用による一時的な首・肩の負担を軽減」というダブル効能でビタミン薬に近いようなチャレンジングな訴求も出てきています。乳酸菌を増やす腸活にんにく、骨の健康維持に役立つ甲子柿(かっしがき)といったユニークな食材も登場しました。甲子柿は、岩手県釜石市で作られる特産品で、燻すことでゼリーのような食感になり、栄養素が豊富な柿です。
 いずれの農産物も、有効な摂取量は1食分の料理に使いやすい量に設定されており、機能性関与成分が分解・流出せずに保持されるような調理法がパッケージに記載されています。

機能性表示に求める効能とは?
 機能性表示食品の利用状況について消費者アンケート調査を実施した結果をご紹介します(2)。機能性表示への関心は、男性が各世代ともお腹の脂肪や体重減少(若年層35.5%、中年層37.0%、年配層31.5%)、腸内環境への関心(若年層32.0%、中年層26.5%、年配層26.5%)が高く、女性はお腹の脂肪や腸内環境のほか、年配層で骨の健康維持(33.5%)がトップであり、骨粗鬆症に対する関心の高さが明らかになりました。
 これらの調査は、サプリメントを含む健康食品を摂取する消費者を対象としたアンケートですが、ケミカルな成分が含有するサプリメントを避けたい消費者にとっては、生鮮食品で健康維持したい方も潜在ニーズとして一定量存在するはずです。コレステロールや体脂肪の低下、腸活、骨の健康について機能性表示生鮮食品でケアすることが可能ですので、添加物を使用しない生鮮食品を日々の料理に取り入れて自然な形で健康維持するのも良い方法と考えます。

(1) 機能性表示食品の届出情報検索(消費者庁のデータベース)
(2) 2021年版 健康食品の市場実態の展望~消費者調査編~(概要版)を購入の上、一部を引用

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