厚労省で審議中の遺伝子組換え食品一覧

遺伝子組換え表示義務のない加工食品・添加物

遺伝子組換えされた農薬耐性農産物と農薬をセット販売
 令和3年10月29日に厚労省が公表した、審査継続中の遺伝子組換え食品を見てみると、害虫や農薬に耐性があるサトウキビ、ナタネ、ダイズ、トウモロコシ、カラシナが列挙されています。気になるのは、これら遺伝子組換え農産物を申請している外資系企業の一部は、一方で農薬を開発・販売しているメーカーでもあります。遺伝子組換えされた農薬耐性農産物の種子と農薬をセットで販売する戦略というのは、賢いというかなるほどと思いました。

審査継続中の遺伝子組換え食品の一覧

厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課(令和3年10月29日現在)

 これらの遺伝子組換え農産物が認められた場合、その後どのように流通するのでしょうか。恐らくはサトウキビからは砂糖類、ナタネからはナタネ油、ダイズからは醤油、トウモロコシからは家畜用の飼料が生産されると推測します。実は、砂糖類、ナタネ油、醤油、飼料のいずれも「遺伝子組換え表示」が不要というルールがあるのです。

 食品表示基準Q&Aによると、「油やしょうゆなど、組み換えられたDNA及びこれによって生じたたんぱく質が加工工程で除去・分解され、広く認められた最新の検出技術によってもその検出が不可能とされている加工食品については、遺伝子組換えに関する表示義務はありません。これは、非遺伝子組換え農産物から製造した油やしょうゆと科学的に品質上の差異がないためです。」と回答しています。

 要するに、現在審議中の農薬耐性農産物は、遺伝子組換えされていても、特定の加工食品や飼料にすれば、食品表示を免れることを前提にして開発されていることが分かります。表示義務は無いため、私たちは知らないうちに遺伝子組換え農産物由来の砂糖類、ナタネ油、醤油を食べていることになります。農薬メーカーの考えることは賢いというか計画的というか、ちょっと怖いですね。

ミラクリン発現トマトは国産初の遺伝子組換え農産物となるか
 審議中一覧の中で興味をそそられたのは、「ミラクリン発現トマト」という国産初の遺伝子組換え農産物です。(株)インプラタイノベーションが筑波大学と共同開発している案件です。2017年に食品安全委員会に評価依頼をしていますが、4年経過した現在でも進展がないようです。ミラクリンとはミラクルフルーツに含まれる成分で、酸味を甘味に変える機能があります。このミラクリン遺伝子をトマトでも発現するように組み替えたものです。ミラクリンの効果は、極微量の0.1~0.2mgの摂取で1~2時間持続します。糖尿病などで普段食事制限を行っている方に対して、甘いものを食べたいというストレスを軽減して、低カロリー甘味料として使用することが想定されます。ミラクルフルーツは高価であるので、コストパフォーマンスの良いトマトでミラクリンを摂取しようという戦略は面白いと思いました。

添加物には遺伝子組換えの表示義務が無い
 食品表示基準Q&A(別添Ⅰ GM-3)によると、「添加物については遺伝子組換え表示を義務付けていない」としています。審査継続中の遺伝子組換え食品の添加物リストをみてみると、ほとんどが食品の加工プロセスで使われる酵素です。たんぱく質を分解するプロテアーゼ、澱粉を分解するアミラーゼなどです。これらは製造に使われた後に加熱失活処理されれば、「加工助剤」に該当するため、そもそも表示の必要は無いのですが、添加物であるため、遺伝子組換えの表示も不要となっています。

審査継続中の遺伝子組換え添加物の一覧

厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課(令和3年10月29日現在)

 また、グルタミン酸ナトリウムやバリンといったアミノ酸も審議されています。これらは調味料や健康食品で使われている食品添加物です。高度に精製された添加物であるので、安全性の審査は比較的スムーズに進むようです。スーパー等で販売している食品の原材料表示で、「調味料(アミノ酸等)」という表記があれば、遺伝子組換え技術で生産されたアミノ酸である可能性があります。バリンについてはスポーツ系サプリメント等で配合されていますが、これも大半が遺伝子組換え技術で生産された成分です。

まとめ

 農薬メーカーは、遺伝子組換えされた農薬耐性農産物(種子)と農薬をセット販売(?)するという戦略を取っています。更に巧妙な仕組みとして、遺伝子組換え農産物由来の砂糖類、油、醤油などの加工品には遺伝子組換えの表示義務がないため、我々は知らないうちに加工品として摂取していることになります。
 また、食品添加物にも遺伝子組換えの表示義務がないため、これらも調味料やサプリメントの形で知らず知らずの間に摂取しています。
 遺伝子組換えの表示がされた食品は買いたくないという消費者側の抵抗感は強いでしょうから、行政側としてはなるべく遺伝子組換え表示を免除するような方策をとっているように感じます。安全性が審議された加工品や添加物だけが流通しているので、問題はないのでしょうが、もう少し消費者側が分かるような表示の制度になってほしいものです。

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