食品添加物:キャリーオーバー・加工助剤という表示免除のトリック

 容器包装に入れられた加工食品を販売する際、表示ラベルには使用した原材料や食品添加物を表示することになっていますが、実際には含有していても表示免除されるケースがあるのです。

キャリーオーバー(表示免除)という扱い

 例えば、醤油で味付けをした煎餅です。醤油という原材料には大豆、食塩、調味料、保存料などが使われており、中でも保存料は醤油の腐敗防止に役立っています。当然ながら、醤油の原材料表示には、「保存料」と表示されます。

 しかし、煎餅という最終製品では「保存料」の効果が発揮されないため、煎餅の原材料には「保存料」の表示が免除されているのです。「保存料」はあくまでも醤油の中で保存効果を発揮するのであって、煎餅の保存性には貢献していない、という理屈になります。

 キャリーオーバーとは「繰り越し」「持ち越し」という意味がありますので、本当は煎餅に塗布された醤油にも「保存料」が微量残存して持ち越されていますが、最終製品で効果を発揮できる量よりも少ない量であることが理由で、表示が免除されているのです。

 別の例では、ベーコン巻きハンバーグのベーコンに含まれる発色剤が挙げられます。ベーコンの鮮やかなピンク色は発色剤(亜硝酸塩)による効果であり、そのベーコンの形を残したままハンバーグを巻いた場合、ベーコン巻きハンバーグの原材料表示には、「発色剤」と表示しなければなりません。ベーコンとして認識して、五感(色)で感じることができるからです。

 一方、ベーコンの形が分からないくらいに細断してハンバーグの生地に均等に混合した場合、発色剤の効果は感じることは出来ず、キャリーオーバーとなり、表示が免除されます。

 要するに最終製品において五感(味、色、香りなど)で感じることができるかどうかで判断されます。残存する発色剤の量は同じであるのに、ベーコンの形状や配合の仕方によって表示する・しないが分かれるとは、添加物に敏感な方にとっては納得できないかもしれません。

 原材料に含まれる食品添加物が、最終製品で効果を発揮するかどうかは、食品メーカーが自主的に判断して決めているので、キャリーオーバーという制度を活用(悪用?)して、表示したくない添加物を表示しないという事も可能になります。

加工助剤というステルス技術

 食品添加物には、最終食品での表示が免除される便利な「加工助剤」という区分があります。加工食品を作るのに使われた食品添加物のうち、次の条件のいずれかに合うものが加工助剤とされます。

①最終的に食品として完成する前に、食品から除去されるもの

②食品中に通常存在する成分に変えられ、かつ、その成分の量が食品中に通常存在する量を有意に増加させないもの

③最終食品中に、ごくわずかなレベルでしか存在せず、その食品に影響を及ぼさないもの

 例えば、食用油脂を抽出する有機溶媒(ヘキサン)、生野菜の殺菌に使われる次亜塩素酸ナトリウム、醤油の旨味を増加させる酵素(プロテアーゼ)などがあり、機能を発揮した後、除去・分解・失活処理されていれば表示の必要はありません。加工助剤とは、食品の製造・加工に役立った後に見えなくなって表示されない、便利なステルス技術であると思います。

まとめ

 食品添加物というのは、様々の優れた働きがあり安全性が確認されています。しかし、食品メーカーとしては余計な食品添加物は出来れば表示したくないというのが本音だと思います。

 そのような要望を忖度した結果かどうかは分かりませんが、最終食品において、五感で認識できない「キャリーオーバー」には表示の義務はなく、加工中に除去・分解された「加工助剤」にも表示の必要がありません。まさに食品産業における「ステルス技術」といえます。消費者は加工に使われた全成分を知ることが難しい立場にあります。

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