認知機能改善、脳腫瘍に対するリスク低減効果
1日3杯のコーヒーは様々な疾病の予防になるらしい
コーヒーを1日3~4杯摂取するヒトは、心疾患、脳血管疾患及び呼吸器疾患による死亡リスクが減少することが報告されています(1)。
また、1日3杯以上飲むヒトは、脳腫瘍に罹患するリスクが低下することも報告されています(2)。同時に試験した緑茶ではリスク低下の効果がないことから、コーヒーと緑茶の両方に含まれるカフェインが関与しているのではなく、コーヒー特有の成分が疾病の低減に関係しているのではないかと考えられています。
認知機能改善成分トリゴネリン
コーヒー特有の成分として「トリゴネリン」という成分が研究されています。トリゴネリンを多く含むコーヒーを週に1度、200mLを3ヵ月間摂取した結果、認知機能が改善することが確認されています(3)。
トリゴネリンはコーヒーの生豆に多く含まれており、高温に弱く、焙煎されることによって減少します。様々な疾病を予防したり、認知機能を改善するトリゴネリンが焙煎中に減ってしまうというのは、勿体ない話だと思います。トリゴネリンをコーヒー中に残存させる良い方法はないでしょうか?
コーヒーを浅煎りすれば、トリゴネニンが分解せずに残存する
調べてみるととても興味深い文献がありました。コーヒーを長時間焙煎すると生豆中のトリゴネリンは熱分解してしまうのですが、弱火で15分程度までの浅煎りの状態でストップすれば、ほぼ生豆の含量のまま残存するようです(4)。15分以下の浅煎りであれば、有効成分トリゴネリンがたっぷりと入ったコーヒーが飲める!ということになります。
さっそく、浅煎りコーヒーをつくってみました。
コーヒーチェリーの収穫から焙煎まで
今回は、コーヒーの木からコーヒーチェリーを収穫して浅煎りで焙煎する工程までを通しで行ってみました。
コーヒーの木から、熟したコーヒーチェリーを収穫・洗浄した
手作業で果肉(左)と生豆(右)を分離した。産業的には専用の果肉分離機があるようです
生豆の果皮の外側にはミュシレージ(ペクチン層)というヌルヌルの粘膜がついているため、念入りに手揉みで除去・洗浄します。台所排水用のネットを使うと便利。
洗浄したコーヒー生豆を60℃・12時間熱風乾燥すると焙煎用の生豆ができる
文献(4)に従って、トリゴネリンが熱分解しないように15分間の浅煎りコーヒーを焙煎しました。写真の右側には50分くらい焙煎した深煎りコーヒー豆を示します。浅煎りのコーヒー豆からはナッツ香を感じたのに対し、深煎りコーヒーからは炭火焼きのような強いロースト香を感じました。深煎りコーヒーは、フライパンで焙煎したのでちょっと焦がしてしまったようです。でも、両方とも美味しそうなので、ミルで粉砕してから飲み比べてみました。
浅煎りと深煎りコーヒーの比較
ミルで粉砕した直後にドリップして飲み比べました。焙煎からドリップまで1時間以内に試飲したので、両方ともかなり新鮮で酸化臭も皆無で美味しく飲めました。写真では分かりにくいですが、浅煎りコーヒーは深煎りよりも少しうすい色をしています。しかし、コク味やナッツ香がしっかりと出ていて満足感があります。浅煎りコーヒーは、15分間の焙煎時間なので、「トリゴネリン」がたっぷりと含有する機能性コーヒーとも言えます。
対して、深煎りコーヒーのドリップは、焙煎香や苦味が強く、これはこれで美味しく飲めました。それぞれの良さがあると思います。因みにカフェインは熱に強い成分ですので、焙煎後も豆にそのまま残ります。
まとめ
弱火で15分間焙煎することにより、疾病予防成分「トリゴネリン」たっぷりの、コク味とナッツ香が感じられる美味しい浅煎りの機能性コーヒーになることが分かりました。自分で好みのローストに焙煎するのは楽しい作業なのでお勧めです。
(1)American Journal of Clinical Nutrition 2015年101巻1029-1037
(2)Int J Cancer.2016 Dec 15;139(12):2714-2721
(3)日本補完代替医療学会,第10回(2007年):軽度認知機能障害に対するトリゴネコーヒーの認知機能改善効果
(4)Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi Vol. 33, No. 10, 725~728 (1986)