沖縄県では、北中城村、粟国村、宮古島が長寿の村
26ショックと330ショック
復帰後20年にわたり長寿を誇ってきた沖縄県でしたが、5年ごとに発表される都道府県別の平均寿命で、沖縄男性は1990年に5位に転落、2000年には26位と大幅に順位を下げました。この危機的状況は「26ショック」と呼ばれ、各方面に大きな危機感が広がりました。
沖縄女性はその後も都道府県別の平均寿命1位を維持していましたが、2010年には遂に3位に転落、男性の平均寿命も30位に順位を落としました(「330ショック」と呼ばれる)。
全国市町村別の平均寿命トップは沖縄
都道府県別の平均寿命では、沖縄県は順位を下げていますが、市町村別の平均寿命では健闘しています。厚生労働省が発表している2015年の市区町村別平均寿命(統計表2)によると、沖縄県の北中城村(きたなかぐすくそん)は平均寿命89.0歳(女性)で全国一位になっています。全国1718市町村の中のトップですので、すごいことだと思います。
食事、地域活動、医療体制など幾つも要因はあると推測しますが、北中城村はアーサ(あおさ)という海藻の養殖拠点産地です。アーサに含まれるビタミン・ミネラル・食物繊維が長寿に関係している可能性があるのではないでしょうか。
沖縄県の市町村別長寿地域
沖縄県の中で、市町村別に長寿の地域があるのかどうか調べてみました。シークワーサーの里である大宜味村(おおぎみそん)は長寿宣言をした村として知られていますが、本当に長寿なのか裏付けるデータを探してみました。
長寿という定義ですが、2015年における日本人の「平均寿命」は、男性80.75年、女性86.99年となっていますので、本稿では80歳以上を男性の長寿、85歳以上を女性の長寿と定義しました。
平成27年国勢調査(人口等基本集計/47沖縄県)のデータを基にして、80歳以上の男性の割合および85歳以上の女性の割合を計算してみました。市町村別に集計した長寿率ベスト10を下表に示します。
男性では、地域人口の13.0%が長寿である宮古島市が1位、10.4%である粟国村(あぐにそん)が2位でした。宮古島市は沖縄県(4.4%)の約3倍も長寿率が高いことが分かります。
女性では、地域人口の19.5%が長寿である粟国村(あぐにそん)が1位であり、沖縄県(4.4%)の4倍以上も長寿率が高い数値でした。続いて、2位が大宜味村、3位が宮古島市となりました。これらは東京都の長寿率(4.2%)よりもかなり高い数値であり、野菜の摂取量、気候、福祉などの要因が影響していると考えられます。粟国村は、粟国の塩やソテツ味噌で有名です。大宜味村は特産品シークワーサーの健康機能が影響しているのかもしれませんね。
宮古島市が長寿である理由
沖縄県福祉保健部が平成25年3月に発表した「県民健康・栄養調査の現状(平成23年度沖縄県県民健康・栄養調査成績)」によると、調査した30地域中、宮古島市の豆類摂取量が顕著に高いことが示されています。豆類とは大豆加工品である納豆や豆腐も含まれます。そういえば、宮古島市には海水でつくる「島豆腐」があります。
豆類の消費量と長寿には相関があるように思います。海外では納豆のような大豆加工品が死亡リスクを下げるという論文があり、宮古島市の場合も詳しく調査すると相関が分かってくるかもしれません。
まとめ
沖縄県は復帰後20年にわたり長寿を誇ってきたが、2000年には男性の全国平均寿命が26位に転落(26ショック)、2010年には女性の順位が3位に転落、男性の平均寿命も30位に下落しました(330ショック)。
一方で、市町村別の平均寿命をみてみると、アーサ(あおさ)の特産地である北中城村が全国1718市町村の中でトップであり、悲観することばかりではないことが分かりました。
沖縄県内においても、宮古島市、粟国村、大宜味村という特定の地域に長寿の人口割合が多いことが統計上明らかであり、この地域特有の食事、文化、医療体制などについて調べていくことは面白いと思いました。
※本稿の国勢調査、平均寿命に関するデータは2015年(平成27年)の資料を中心に引用しました。