月桃(ゲットウ)の葉から精油の抽出に挑戦

防虫・消臭・鎮痛作用が期待できる希少精油

 月桃(学名:Alpinia zerumbet)は、沖縄県の山野に自生し、中国、台湾やマレーシア、タイなどにも分布する多年草です。沖縄の方言では、サンニン、サニンなどと呼ばれています。とても美しい花を咲かせます。害虫が少なく特別な管理をしなくても生育が旺盛であることから、手軽に利用できる熱帯植物です。

石垣島に自生する月桃 (学名:Alpinia zerumbet

 葉には芳香性の精油が含まれており、独特の香りを楽しむことができます。月桃の成分には防虫効果もあり、抽出エキスを体にスプレーすると虫除けになります。沖縄では月桃の葉でお餅を巻いてつくる「カーサムーチー」というお菓子があり、月桃の香りと一緒にいただく保存料無添加のお餅はとっても美味しいです。

月桃葉の精油成分

 沖縄県工業技術センターの報告(1)によると、月桃葉の精油について分析・同定した結果が示されています。葉に含まれる精油成分には、抗菌作用が報告されており、ムーチー(お餅)を巻いて保存効果が発揮されます。また、樟脳(カンファー)の成分と共通することから防虫剤にも使われます。同センターの分析結果から、月桃葉の精油には「ボルネオール」という樟脳に類似した香り成分が主成分(21.1%)であることが分かっています。ローズマリー油、ラベンダー油にも含まれる成分です。

 このボルネオールは、ヒトの皮膚に塗布すると効果的な鎮痛剤であることが証明されています(2)。月桃葉の精油には防虫効果・抗菌効果・鎮痛作用が期待できるので利用価値が高いです。畑の作業で蚊が多くなってきたので、自分で精油を採取して利用することにしました。

精油を採取する装置

 石垣島では至る所で月桃が自生しています。自分が管理しているピパーツ畑の周辺にもたくさん生えています。月桃葉を採取し、カットして蒸留用の装置にセットします。

月桃葉を入れた蒸留装置:カットすると精油の回収量が高くなる

 原料の月桃葉をセットして加熱すると抽出された精油が水分と一緒に気化します。その揮発成分を冷却器で冷やすことによって液体化して回収することができる装置が市販されています。

蒸留装置の全体写真:原料の月桃葉をセットして加熱すると抽出された精油が揮発してくる。右側の冷却器で冷やすことによって液体化して回収することができる

月桃葉の精油の量は?

 月桃葉200g×5回を繰り返して、なんとか1ccほどの精油が取れました! 写真では上層(黄色の液体)が精油に当たります。月桃葉1kgから1ccしか取れない精油はとっても貴重です。この中に鎮痛成分「ボルネオール」がぎっしり詰まっています。

 因みに黄色い精油(上層)の下にある透明な水(下層)にも月桃葉の香り成分が含まれています。下層の香り水は、芳香水と呼ばれており防虫・消臭スプレーに利用することができます。畑仕事の際に腕等にスプレーすると防虫効果が期待できます。

上層(黄色)には鎮痛作用のある希少な月桃葉の精油、下層には月桃の芳香水が採取できた

 精油を蒸留する装置は個人でも購入可能のようですので、月桃以外にも熱帯植物の精油を採取して楽しんでみてはいかがでしょうか。柑橘の果皮からは比較的多くの精油が採取できるようです。

(1)沖工試業務報告第15号, 75-79(1987年)

(2)EMBO Mol Med. 2017 Jun;9(6):802-815.

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