面倒な有機加工食品の認証を取得しなくても「有機(オーガニック)」と強調表示できる裏技

有機原材料を強調するテクニック

有機食品とは

 有機的に生産した農畜水産物やその加工食品のことで、有機農産物とは化学的な肥料や農薬を避けて環境への負荷を出来るだけ減らした栽培方法で生産された農産物です。

 有機農産物およびその加工食品では「有機(オーガニック)」と表示できる条件が決まっており、有機JASマークの貼付が義務付けられています。

 農水省が行った調査によると、農産物や加工食品を含めた日本の有機食品市場は2009年で1300億円、2017年で1,850億円と推計されており拡大傾向にありますが、2011年に国内で生産された農林水産物・加工食品の全生産額は9兆2千億円ですので、全体の数%の規模しかないというのが現状です。

有機食品を販売するには検査認証を受ける必要がある

 有機農産物の農家や加工食品メーカーは、農林水産大臣から登録を受けた認証機関に対して毎年検査料を支払い、生産記録について監査してもらう必要があります。農産物の栽培履歴や加工行程で化学薬品が使われてないか等を記録で提出する仕組みになっており、農家やメーカー側にはかなりの労力がかかります。

有機JASマーク:

地道に生産履歴を記録して、生産者自らが「格付」した食品だけに貼ることが許される。毎年、認証機関から監査を受ける必要がある。

「有機(オーガニック)」と強調表示できる裏技

 このように有機JASマークを貼るまでにはたいへんな労力がかかるのですが、実はJASマークを貼らないで商品パッケージに「有機(オーガニック)」と強調表示することが出来るのです。

 例えば、スーパーマーケットでは各社色とりどりの醤油が並んでいます。ラベルAとラベルBの商品が並んでいたら、皆さんには一見してその違いが分かるでしょうか。どちらも有機と書いてあるから、大きな違いはないと感じるのではないでしょうか。

 しかしながら、有機JASマークが印刷されているラベルAでは、製品化や販売に至るまでに認証機関による監査を受ける必要があり、メーカー側に負担がかかっています。

 一方、ラベルBの商品では認証機関による監査を受ける必要がありません。これは「特色のある原材料」という強調表示であり、「原材料として有機大豆を使って製造したしょうゆ」という内容になります。認証機関による監査がなく、有機大豆を仕入れてしょうゆを製造するだけなので、ラベルAの場合の労力よりも負担が少ないです。開発や維持管理の費用も全然違います。似たような有機の表示にも関わらず、ラベルBの表示方法は「ちょっとズル」なのではないかと感じています。有機原材料の強調だけで、いかにも製品全体が有機加工食品であるかのように誤認するのではないか、むしろ誤認を狙っているようにも見えます。

有機JASマークに対する認知度

 果たして一般消費者は、ラベルAとラベルBの商品価値の違いを感じて購入しているのでしょうか。そもそも有機JASマークに対する認知度がまだまだ低いのではないかと思います。

 平成30年に農林水産省生産局から報告された「平成29年度 有機食品マーケットに関する調査結果」によれば、有機JASマークの確認状況について、週1回以上有機食品を利用すると回答した者に聞いたところ、「確認する」と回答した割合が50.1%、「確認しない」と回答した割合が49.9%でした。

※ 「確認する」と回答した割合は、「必ず確認している」、「ほとんど確認している」及び「ときどき確認する」と回答した割合の合計。

※ 「確認しない」と回答した割合は、「あまり確認しない」及び「全く確認しない」と回答した割合の合計。

出典:平成30年に農林水産省生産局「平成29年度 有機食品マーケットに関する調査結果」、図8を抜粋

 つまり、週1回以上有機食品を利用すると回答したヒトの中で、半数は有機JASマークを確認しないで有機食品を購入していることになります。消費者に有機JASマークがあまり認知されてないのであれば、手っ取り早く原材料の強調表示によってパッケージに「有機」と記載できる裏技の方法で商品開発するのは当然だと思います。

まとめ

 有機農産物の農家や加工食品メーカーは、農林水産大臣から登録を受けた認証機関に対して毎年検査料を支払い、有機JASマークを貼付した生産記録を監査してもらう必要があり、かなりの労力と検査費用がかかっています。

 一方で有機JASマークを貼らないで商品パッケージに「有機(オーガニック)」と強調表示する方法もあり、認証検査料や有機の生産記録が不要であることから、この手法を取るメーカーも多いです。

 農水省の調査によれば、週1回以上有機食品を利用すると回答したヒトのうち、半数は有機JASマークを確認しないで購入していることが浮き彫りになりました。有機食品を意識的に購入する消費者でさえ、有機JASマークの認知度が高くないとすれば、苦労して有機食品を製品化するメーカーは今後も増えることはないように感じます。

 有機原材料を配合するだけで有機(オーガニック)の強調表示が出来て、消費者を誤認させるような「特色のある原材料」という制度には疑問を感じます。

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