タイ料理に使われる抗がん・抗ウイルスハーブ
以前、タイに行った際に料理に入っていたガランガルというショウガ科のハーブの香りが忘れられません。和名はナンキョウ(Alpinia galanga)といって、東南アジアでは根茎がカレーやトムヤムクンに使われています。普通のショウガと違ってその外観も独特です。タイショウガとも呼ばれています。
ナンキョウの根茎をすりおろすと、新鮮なショウガの香りにレモングラス様の芳香がミックスされた独特の香気が立ってきます。ナンキョウが入っているタイカレー(マッサマンカレー)を食べた時は、複雑なハーブの味がして身体が浄化されるようでした。
ナンキョウの機能性
タイを代表する料理の一つ、辛いエビ入りスープ(トムヤムクン)には抗がん作用のあることが報告されています。タイなどの東南アジア諸国において、胃がん・大腸がんといった消化器系がんの死亡率は他のアジア諸国よりも低いことが知られており(1)、食生活との関係、特にナンキョウを使用した伝統料理が注目されています。
タイでは前立腺がん・乳がんの罹患率も低いことからナンキョウのような食習慣との関係について今後の研究が待たれます。
更にナンキョウの根茎には「ガランギン」という生理活性物質が含まれており抗炎症作用、抗ウイルス作用等が研究されています。
最近では、SARS-CoV-2ウイルスが感染する際に働くスパイク蛋白に「ガランギン」が結合することが分子ドッキング法で明らかになりました(2)。ガランギンはSARS-CoV-2ウイルスの感染および複製に対して阻害力を発揮する可能性を示しています。
同論文の中ではウコンに含まれるクルクミン、シークワーサー果皮に含まれるノビレチンについても調べており、いずれもスパイク蛋白に結合することが確認されています。熱帯性の植物にはCOVID-19に対抗できるポテンシャルが期待できるようです。
タイカレーやトムヤムクンで冷えを解消し、がん予防・コロナ対策まで出来てしまうなんて、ナンキョウはスーパーショウガと言えますね。
(1)味木ら:連載第4回,固形癌の地域・人種差,血液・免疫・腫よう(1999)
(2)プレプリント2020、2020030214(doi:10.20944/preprints202003.0214.v1)