同種混合と異種混合では原産地表示が変わってくる
本稿の趣旨
赤・黄・青という色の違うピーマン(3種)をカット・混合した野菜ミックスは生鮮食品であり、原産地の表示をしなければなりません。しかし、赤ピーマンを「赤パプリカ」に置き換えた場合、異種混合と見做されて生鮮食品ではなく、加工食品に分類されます。加工食品として扱われると、重量50%未満の原材料について原産地表示をしなくても良いことになります。故意に40%、30%。30%の割合で異種の野菜を混合すれば、表示したくない特定の原産地を書かない手段になってしまいます。
食品スーパーに納品するカット野菜工場の話
商品例1(某日)
カット野菜工場の担当K君 「店長!いつもお世話になっております。国産のピーマンが入荷したので、今日は赤・黄・青の彩りカットピーマンを加工して、店長のお店に納入しますね。3色の彩りが良く新鮮で美味しそうです。」
店長 「K君、相変わらず、商品企画のアイデアが冴えてるね。カットピーマンの配合について教えてくれるかな。」
K君 「赤ピーマン40g、黄ピーマン30g、ピーマン30gとして内容量100gです。」
店長 「どれも国産ピーマンだし、売れそうだね。生鮮食品だから原産地表示も忘れずにラベルに印字しておいてよ。」
K君 「分かりましたー」「商品例1の表示ラベルを貼って納入しますね。」
商品例2(翌日)
店長 「K君! ピーマンの彩りカットミックスの売れ行きが好調だよ。今日も引き続き陳列するから納入をよろしく」
K君 「店長、困ったことに赤ピーマンが不足して直ぐに入荷しないんですよ。」「ただし、中国産の赤パプリカなら在庫があると仕入れ担当は言ってますが、どうしましょうか。」
店長 「おお!そうだ! それを使ってよ。赤パプリカなら味や彩りも変わらないから良いね。」
K君 「でも店長、中国産と原産地表示することになりますけど大丈夫ですか?」「商品例2のようなラベル表示になる予定です。」
店長 「う~ん…」
商品例3(商品例2の表示ラベルはボツになった)
店長 「K君、パプリカとピーマンをミックスすれば、異種混合になるので生鮮食品ではなく加工食品になるんだよ。加工食品では必ずしも原産地の表示はしなくても良いからね。」
K君 「と言いますと…」
店長 「重量の割合が50%以上を占める農産物が含まれない加工食品では、原産地の表示は不要なんだ。」
K君 「え!? そうなんですか」
店長 「だから、今回のカットミックスでは商品例3の表示ラベルでお願いね。」(商品例2のラベルはボツ)
K君 「え!? あ、はい」(心の声:この店長、大丈夫か?)
店長 「さあ、今日もたくさん納入してね! 頑張って売るから。」
商品例4(2022年4月1日)
K君 「店長! たいへんです。2022年4月1日から全ての加工食品を対象に重量割合上位1位の原材料に原産地を表示する制度が完全施行されることになってます!」「赤パプリカは重量割合1位だから原産地を中国産と表示する必要があります。」
店長 「確かにそうだね。先月、原料原産地制度についてK君の工場にも通知があったね。」「一つ、提案があるんだけど、赤パプリカと黄ピーマンの順番を変更できないかな?」
K君 「黄ピーマンの在庫はありますし、彩りや外観にはさほど影響ないので、可能と思います。」
店長 「新しい原料原産地の表示ルールに従えば、商品例4のような表示ラベルになるはずだ。」「K君、今日からこの表示で頼むよ」
K君 「はい、承知しました!」(心の声:この店長、大丈夫か?)
まとめ
パプリカやピーマンといった異種野菜の混合カット品は加工食品に分類され、重量の割合が50%未満の原材料で占める場合、原産地表示が不要になる場合があります。この制度を悪用して故意に特定の原料が50%以上にならないようにすることも出来ます。つまり、原産地を表示したくない原材料の比率を50%未満にする方法です。
しかし、2022年4月1日から全ての加工食品を対象に重量割合上位1位の原材料に原産地を表示する制度が完全施行されます。50%未満であっても、重量割合上位1位の原材料には必ず原産地を表示しなければなりません。しかし、これについても原産地を表示したくない原材料の順位を2位にするといった対応(配合変更)が可能であるので、消費者が納得するような制度になるには未だ時間がかかりそうです。
※今回のケースは、スーパーのバックヤード等で加工して同スーパーで販売する「インストア加工」に該当しない場面を想定しています。