石垣島産ヒハツモドキの栽培とピパーツへのブランチング加工

完熟よりも未熟果を加工すると独特の香りが楽しめます

台風対策

 9月の台風14号は先島諸島に接近して、石垣島でもかなり強い風が吹きました。

 栽培中のヒハツモドキの苗が吹き飛ばされないよう支柱に固形していたおかげで、根本が折れずに済みましたが、植えていた22株のうち2株が飛ばされてしまいました。写真のようにしっかりと付着根が支柱に張り付いていれば心配ないのですが、2株は植え直しです。

台風対策のため、支柱に固定されたヒハツモドキ

ピパーツへの加工はブランチングが重要

 気を取り直して、ヒハツモドキの実(果穂:かすい)を収穫して自家製パウダーをつくりました。沖縄では特にヒハツモドキの香辛料は「ピパーツ」と呼ばれます。ヒハツモドキの果穂は通常は赤く熟した状態で収穫されますが、今回は未熟の青い状態で収穫してみました。

 実は、青い果穂には完熟とは違った独特の香りがあります。清々しい森林浴を思わせる香りとでも言いましょうか。完熟の果穂とはちょっと違った芳香です。

青い状態(未熟果)で収穫したヒハツモドキ

 いろいろ試したのですが、収穫したヒハツモドキをそのまま乾燥してもピパーツ粉末の香りが良くなりませんでした。時間が経つと酸化臭が出てくるようです。

 調べてみると、ヒハツモドキに含まれるポリフェノールを酸化する酵素が悪さをしていることが推測されました。リンゴの果肉が褐色に変色する際にも、ポリフェノールの酸化が起こっています。

 他の野菜の加工では、ブランチングといって短時間、湯通ししてポリフェノール等を酸化する酵素を失活させることがよく行われます。

 収穫したヒハツモドキについても、ブランチング処理をすると乾燥後の香りが良くなることが分かりました。ブランチングの条件はヒハツモドキの果穂を熱湯に60秒入れてから、直ぐに流水で冷却すると良いです。

ブランチングしたヒハツモドキの乾燥条件

 天日乾燥は天候に左右されて品質が安定しないため、ドライフルーツをつくる乾燥機で乾燥しました。加熱乾燥条件は、60℃・8~10時間がベストでした。

加熱乾燥した未熟果のヒハツモドキ

 60℃・10時間程度乾燥すると、水分活性(Aw)という微生物が繁殖しない(腐りにくい)指標が0.5くらいに低下します。水分活性0.5では菌が増加できず全く腐敗は起こらないので、長期保存が可能になります。普通に1年以上もちます。

乾燥ヒハツモドキの粉末化

 乾燥物をミルで粉砕してから、メッシュ(700ミクロン程度)で篩うと写真のようなピパーツ粉末を得ることができます。

未熟果ヒハツモドキからつくったピパーツ粉末

 石垣島産のピパーツ粉末は希少価値があり、700~800円/20gで販売されていますが、自前で加工してみるのも醍醐味があります。

 香りを残すような加工方法でつくった「マイピパーツ」を常に持ち歩いて、沖縄そばや揚げ物などに振りかけて、独特の芳香と辛味を楽しんでいます。

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